シャント手術

シャントとは

シャントとは

腎不全の患者様へ人工透析を行う際、毎分約200mlの血液を循環させる必要がありますが、患者様は静脈にそれだけの血液量を確保することは困難です。そこで、バスキュラーアクセスという透析装置と患者様の間で血液を循環させるために、血液の出入口を確保する必要があります。その一つがシャントで、動脈と静脈を直接繋ぎ合わせた血管です。なお、シャント血栓ができて閉塞してしまうと、透析治療に支障をきたすため、必ず定期的なメンテナンスを実施します。

人工透析について

腎不全の患者様で腎機能が通常の10%以下に低下してしまうと、体内で血液を濾過することができなくなり、老廃物が溜まっていきます。透析療法では、腎臓の代用品としてダイアライザーという透析器によって老廃物を体外へ排出することで、生命の維持を目指します。腎機能は一度失われると元に戻ることはありませんので、週に3〜4回のペースで治療を受ける必要があります。

シャント手術について

外シャントと内シャントの2つに分けられます。

外シャント

静脈と動脈を身体の外側で繋いだものを外シャントと呼んでいますが、血管がむき出しになることで感染症の発症リスクがあるため、現代の医療現場で行われることは皆無です。

内シャント

患者様の血管の状態を検査した上で、人工血管もしくはご自身の血管を使用します。

自分の血管を用いる場合

AVFと呼ばれる、皮膚の下で静脈と動脈を繋ぎ合わせることでシャントを作る手法で、閉塞が起きにくく長期間の使用にも耐えうることで、最も代表的なシャントとして知られています。通常は、利き手ではない手の手首付近でシャントを作りますが、動脈硬化が進行している方や、過去の点滴や採血の影響で血管がダメージを受けている方については、肘付近で新しいシャントを作ることもあります。なお、ご自身の血管を使う場合はすぐに穿刺することはできず、2~4週間経ってから治療を開始することとなります。したがって、スムーズに治療が始められるように、事前にシャントを作っておくことが望ましいでしょう。

人工血管を用いる場合

AVGと呼ばれる手法で、ご自身の静脈の問題でシャントが作れない方に、人工血管でできたシャントを使用します。なお、ご自身の血管を使う場合と比べて、血管の閉塞や感染症の発症リスクが高いというデメリットがあります。また、術後すぐに穿刺できますが、耐久性に難があり、2~3年で寿命が来ると考えられています。

動脈表在化

心不全の患者様などは、シャントによって心臓に負担がかかるリスクがあり、内シャントを作れないことがあります。したがって、皮膚の下に移動させ他動脈に直接穿刺して透析治療を行うことがあり、これを動脈表在化手術と呼んでいます。穿刺には静脈と動脈の2本の血管が必要となるため、必ずご自身の静脈を使うこととなります。

シャントトラブルについて

シャントに異常が起こると、透析治療を通常通りに実施できない恐れがあります。したがって、シャントを定期的にメンテナンスして不測の事態が起こらないよう準備しておく必要があります。以下のような症状が起こっている場合、シャントに何かしらの異常が起こっている疑いがありますので、直ちに医師へご相談ください。

シャント狭窄

シャントが狭くなっている状態で、小さな隙間風が通ったような音が聞こえます。狭窄を起こすと、透析の際の脱血に問題が生じ、返血圧が高まる恐れがあります。

シャント閉塞

シャントが詰まっている状態で、血栓や血管が狭まることが原因となります。閉塞が起こると透析治療は実施できませんので、直ちに対処する必要があります。

シャント血管瘤

シャントがこぶ状に膨張する状態で、小さなこぶであれば様子見で構いませんが、痛みがある、感染症の疑いがある、急激に大きくなったという際は治療を必要とします。

静脈高血圧

シャントの上肢が腫れた状態です。狭窄や閉塞によって血液の逆流が起こることが原因で、うっ血して腫れが生じると考えられます。

スチール症候群

シャントの血流が悪化し、指まで十分な血液が届かなくなると、シャントを作った側の指に変色、痛み、壊死といった症状が現れることがあります。

感染

細菌感染によって腫れや痛みが生じます。人工血管の場合は特に感染リスクが高いと言われています。感染が分かったら直ちにシャントを閉じて新たなシャントを作ることが必要です。

シャントPTA

シャントに狭窄や閉塞が起こると、透析治療に支障が生じるため、シャントPTAという治療でシャントの修復を行っていきます。先端に風船がついたカテーテルをシャントの中に挿入し、狭窄や閉塞を起こしている箇所で風船を膨らませることでシャントを広げて、狭窄や閉塞を解消させます。閉塞の原因が血栓である場合は、カテーテルで血栓を吸引したり、血栓を溶かすために薬剤を使用することもあります。

シャント手術の流れ

1初診・検査

初診の際に超音波検査を実施し、患者様の静脈と動脈の血管の状態を確認します。
別の病院からの紹介の場合は、紹介状も必ずご持参ください。

2検査結果と手術の説明

超音波検査の結果を基に、ご自身の血管と人工血管のどちらを使うかを判断し、患者様へご説明いたします。

3手術

局所麻酔をして手術を行います。
手術時間は、ご自身の血管であれば60分程度、人工血管であれば120分程度かかる見込みです。

4透析開始・メンテナンス

シャントが作成できましたら、透析治療に移っていきます。
なお、ご自身の血管を使う場合は、治療を始めるのに2~4週間程度かかります。
治療を始めてからは定期的にシャントの検査とメンテナンスを行い、不測の事態が起こらないように準備しておきましょう。

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